社長のための建設業経営ゼミ (経審編)3


さて、次に左中ほどの評点X2の部分を見てください。

8)自己資本額及び利益額について評価をしています。

9)自己資本額とは過去に企業が蓄えてきた儲け=純資産のことです。(=総資産−負債)

10)ここで指している利益額とは、営業利益と減価償却実施額を足した額のことです。 

11)上記自己資本額と利益額の2期分を足して平均した額を加重して算出された数値で評価されています。

12)当然のことながら多いほうが良いに越したことはありません。

13)ここで利益額について、減価償却実施額を営業利益に戻しているところが肝心なところです。企業会計原則の立場から見ると減価償却は行はなければなりません。

 しかし、税務署への申告に使用されている決算書ではたまに減価償却を先送りしているケースがあります。この場合、償却を行っている企業とそうではない企業とでは出てくる評価に不公平が生ずることとなります。それを防ぐためにこのような措置を取っています。 

14)消費税についても経営事項審査では消費税を抜いた決算書を基に財務諸表が作成されます。このことも上記のようなことを防ぐために行われています。通常税込みの決算書は、支払われた消費税の額が営業利益に反映されていません。

15)自己資本額は、経営状況分析の財務の健全性を評価する指標で2回用いられています。その重要性は高いといえます。

ここまでで、次のようなことが分かります。

・利益額は企業の本業で稼ぐ力量を評価していることで、重要なところです。
・自己資本額は、額だけではなくその資産との割合で評価されます。また、一足飛びに増やすことができないことから計画的な企業運営が求められます。


 それでは次に右側の項目、W=その他審査項目(社会性等)を見ていきましょう。

16)労働福祉の状況のところで、上位3項目は社会保険に加入しているかを問われています。未加入の場合大きく減点され、同業他社と比較したとき救いようがないくらい差が開いていることが分かります。点数上だけのことならまだ我慢できますが、今後、建設業界からはじき出される恐れが有りますので未加入のところは早急に加入してください。この先従業員共々行き場を失いかねません(元請には参入しない企業の場合も同じです。)。

17)上記以外の他の4項目は任意加入です。従って加点対象ですから加入であれば評価されることとなります。

18)建設業の営業継続の状況について見てみましょう。

19)営業年数について、営業年数の起点は建設業の許可の日が起点となります。創業日からでは有りませんので注意が必要です。

20)更に実際の経過年数から5年差し引かれた年数を評価します。許可とって10年経過した会社の場合、10年−5年=5年の評価となります。

21)ここは企業の暦年経過年数を評価しているところで、企業業績とは直接関係有りません。

22)次に民事再生法又は会社更生法の適用の評価については、再生期間中の場合60点の減点となります。又、再生手続きが終結した企業は営業年数がゼロにリセットされます。

23)次に、防災活動への貢献についての評価について見ていきましょう。

24)地域での貢献度を防災への協力体制から評価するところです。都道府県あるいは市町村との間で災害が発生したときの協力体制の中に組み込まれているかを防災協定に加入していることの証明により評価されます。ここは、発注者の主観的評価でも出てくる重要な評価項目です。

25)次に法令遵守の状況のところです。

26)該当があると減点される項目です。指示処分で15点営業停止処分で30点の減点を受けることになります。法令遵守は経営者として心得ておくべきところですので別に取り上げます。

27)次、建設業経理の状況です。ここでは、企業の適正な経理への取組み状況を評価しています。

28)監査の状況については、会計監査人設置会社、会計参与設置会社、社内の一級建設業経理士等の自主監査を行っている企業を評価します。

29)社内に所属する公認会計士等の数、2級建設業経理士を評価します。顧問税理士等では有りません。

30)研究開発費の状況につてです。加点対象企業は会計監査人設置会社に限定されます。通常有価証券報告書によって確認されます。

31)次に、建設機械の保有状況についてです。

32)ここでは、建設企業の地域での社会的貢献(災害時の備え)を期待し、災害発生時に現場で稼動できる状態にある建設機械を限定してその保有台数を評価します。

33)評価対象の機械は次の3機種です。ショベル系掘削機トラクターショベル(バケット容量0.4m3以上)、ブルドーザー(自重3.0t以上)です。15台が限度です。

34)つぎにISOについて見て行きます。9001と14001の登録の状況が評価されます。ISOについての評価は発注者において主観的事項で評価されてきたのですが、その事務負担の軽減策から取り込まれました。

35)いずれの場合も建設業関係が認証の範囲に含まれていることが条件です。また、部分的な営業所の取得では認められませんので注意が必要です。例えば、岐阜本店が取得し、名古屋営業所はその範囲に入っていない場合は無しと見なされます。取得のときの認証範囲には注意が必要です。

 
・この評価項目は、社会性等という言葉からもうかがえるように、企業に属する従業員への福利厚生や企業の社会的責任、また地域への貢献状況を評価の指標に利用しています。出来るところから取り組みましょう、無理の無いように。